宗祖親鸞聖人のご生涯を数回にわたって振り返ってみたいと思います。

 90年という長い生涯にもかかわらず、自らの履歴をほとんど語られなかったといわれる聖人を偲ぶとき、私たちはまず、聖人の曾孫である覚如(かくにょ)上人(しょうにん)(1270-1351)が聖人の御一生をまとめられた『親鸞聖人伝絵(でんね)』に注目すべきかと思います。『伝絵』は聖人滅後33年(1295)、覚如上人が二十六歳の時撰集され、その後、手を加えられて今日、上巻8段・下巻7段として遺っています。『伝絵』の(ことば)(がき)だけを集めたものを『御伝鈔』、絵の部分だけを集めたものを『御絵伝』といいます。真宗寺院の年中行事として最も大事な報恩講(ほうおんこう)が勤められるとき、『御絵伝』を本堂の余間にお掛けし、『御伝鈔』が拝読されます。近代、『御伝鈔』に対しては様々な評価・批評がされています。私たちは、「人の跡を求めず、古人の求めたるところを求めよ」(芭蕉)といわれるように、聖人を宗教的偉人としてではなく、聖人の求められたところを私もまた求めてゆく気持ちで御一生をたずねてゆくことが大切かと思います。

2007年3月 発行「共に歩まん」より