長稱寺住職 木曽 義浄

 フランスの哲学者であり、劇作家のG・マルセル(ガブリエル・マルセル 1889~1975)の表した言葉です。

 私たちは、この世に生きている間こうありたいと思いながら絶えず、夢や希望を叶えるために、努力して人生を送ってはいる。社会や個人の身の回りに、起ってくるさまざまな事柄や、他者との関係出会いなど自分自身の都合の善し悪しに関係なく、さまざまな経験の中にありながらも、そこから今の我が身に気づき、今の我が身の立場を身にも受けていない。全てが絶えず変化しているのに、私たちの自分勝手に思い通りにしたいと。その上自分自身の都合で、どんな事もやってのける。実は賢そうで愚か、強そうで弱く、やさしそうで冷淡というように私たちは、矛盾している存在であると。私たちに先んじて、念仏申して下さった方々も顕している。

 G・マルセルの表した言葉との出会いからも、人間であり、人間としてありたい、私たちこの問われるものとして、生死していく中で私たちは、今こそ私たち自身と向き合い、念仏申せと願われている身と共に頂きたい。

2008年9月発行「共に歩まん」より